豚肉が臭いのはなぜ?獣臭さの原因と臭みを取る方法を解説
豚肉が臭いと感じる原因は、雄豚特有のにおいや脂肪の酸化、保存状態などさまざまです。臭みの原因やアンドロステノン・スカトールの特徴、調理で臭みを抑える方法、傷んだ豚肉の見分け方を解説します。
公開日:2026/10/29[Thu]
この記事のポイント
- 豚肉が臭いと感じるのはなぜ?
- 雄豚特有のにおいや脂肪の酸化、保存中の変化などが原因です。
- 豚肉の臭みを取るにはどうすればよい?
- ドリップを拭き取り、ショウガやニンニクなどの香味食材を使うと、においが目立ちにくくなる場合があります。
- 臭い豚肉は食べても大丈夫?
- 普段とは違う強い異臭や明らかな品質の変化がある場合は、食べずに廃棄してください。
豚肉が臭いと感じるのはなぜ?
豚肉のにおいには、肉や脂肪に含まれる成分、雄豚特有のにおい、脂肪の酸化、保存中の変化などが関係しています。においの強さや種類は、豚の性別や飼育条件、肉の部位、保存状態、調理方法などによって変わります。[1] 豚肉の獣臭さが気になっても、においだけで原因を特定することはできません。肉本来のにおいなのか、脂肪の酸化や保存中の変化によるものなのかを分けて考えることが大切です。豚肉の臭みの正体は?
豚肉の臭みには、いくつかの原因があります。獣臭さに関係する代表的なものが、アンドロステノンとスカトールです。また、脂肪の酸化や保存状態によっても、においが変化することがあります。雄豚臭(ボアテイント)とは
雄豚臭(ボアテイント)とは、主に去勢されていない雄豚の肉に生じる特有のにおいです。代表的な原因物質として、アンドロステノンとスカトールが知られています。[2] 雄豚臭は、未去勢の雄豚の肉で問題になることがあります。ただし、国内で販売されている豚肉のうち、雄豚臭の影響を受けているものの割合については、明確な統計情報が限られています。 豚肉に獣臭さを感じても、必ずしも雄豚臭が原因とは限りません。購入した肉のにおいだけでは原因物質を特定できず、脂肪の酸化や保存中の変化なども考えられます。アンドロステノン:尿を思わせるにおい
アンドロステノンは、雄豚の体内で作られるステロイド系の化合物で、雄豚臭の原因物質の一つです。尿を思わせるにおいとして表現されることがあります。[2] アンドロステノンのにおいの感じ方には、大きな個人差があります。ほとんど感じない人もいれば、低い濃度でも不快に感じる人もいます。また、においをどの程度感じるかだけでなく、そのにおいを好ましいと思うかどうかにも個人差があります。スカトール:糞便を思わせるにおい
スカトールは、腸内の微生物がトリプトファンというアミノ酸を分解する過程などで生じる化合物です。糞便を思わせるにおいがあり、雄豚の脂肪に蓄積すると、肉のにおいや風味に影響することがあります。[2] スカトールは、アンドロステノンほどにおいの感じ方に大きな個人差がなく、多くの人が高濃度の肉を不快に感じるとされています。[2]脂肪の酸化によるにおい
豚肉の脂肪は、空気中の酸素などの影響で酸化することがあります。酸化が進むと、アルデヒド類などの揮発性化合物が生じ、古い油のようなにおいにつながる場合があります。[1] 脂肪の酸化の進み方は、保存温度や保存期間、包装の状態などによって変わります。冷蔵や冷凍で保存していても、時間の経過や取り扱い方によって品質が変化することがあります。保存状態や鮮度の変化によるにおい
豚肉は、適切に保存されていないと、微生物の増殖や肉の成分の変化によって異臭が生じることがあります。普段とは違う強いにおいや、色などの明らかな変化がある場合は、使用せずに廃棄してください。[3] ただし、見た目やにおいだけで、肉の安全性を完全に判断することはできません。食中毒の原因となる微生物が存在していても、見た目やにおいに明らかな変化がない場合があります。保存期限や保存方法を守り、十分に加熱することも重要です。[4]部位や加工形態によって豚肉のにおいは変わる?
豚肉は、部位や脂肪の量、加工形態などによって、においの感じ方が変わることがあります。ただし、特定の部位が必ず臭いというわけではありません。保存状態や調理方法も、においに影響します。脂肪の多い部位
脂肪には、肉の風味や香りに関係する成分が含まれています。脂肪の量や成分の違いによって、加熱したときに生じる香りも変わります。また、脂肪が酸化すると、においが変化することがあります。[1] 脂肪の多い部位でにおいが気になる場合は、脂肪そのものの風味なのか、酸化や保存中の変化によるものなのかを考える必要があります。豚ひき肉
豚ひき肉は、肉を細かく加工したもので、特定の部位を指すわけではありません。加工によって肉の表面積が大きくなるため、空気や微生物の影響を受けやすく、品質が変化しやすい点に注意が必要です。 ひき肉は、かたまり肉と同じ感覚で長時間保存せず、表示された保存方法や期限を守って、できるだけ早めに使い切りましょう。豚肉の臭みを取る方法
豚肉の臭みが気になるときは、調理前にドリップを取り除いたり、香味食材や調理方法を工夫したりすると、においを目立ちにくくできる場合があります。ただし、こうした工夫は肉本来のにおいや調理中の香りを調整するもので、異臭のある肉を安全にする方法ではありません。ドリップを拭き取る
ドリップとは、肉から流れ出た水分のことです。肉の成分を含んでおり、においが気になる原因の一つになる場合があります。調理前に清潔なペーパータオルで拭き取ると、余分な水分を取り除けます。 農林水産省も、ドリップを放置すると臭みがつき、味わいが低下する原因になるとして、ペーパータオルなどで拭き取ることを勧めています。[7] 生肉を水で洗うと、細菌が周囲の食材や調理器具に広がるおそれがあります。そのため、水で洗わず、ペーパータオルなどで拭き取る方法が適しています。使用したペーパータオルはすぐに捨て、手や調理器具も適切に洗浄してください。[8]ショウガやニンニクなどの香味食材を使う
ショウガ、ニンニク、ネギ、ハーブなどの香味食材は、料理に香りを加え、肉のにおいを目立ちにくくするために使われます。ただし、効果は食材の種類や組み合わせによって異なり、豚肉の臭みの原因物質をすべて取り除けるわけではありません。 雄豚臭のある肉を使った研究では、ニンニクとパセリを混ぜた衣を付けて揚げることで、雄豚臭が目立ちにくくなる可能性が報告されています。ただし、この研究は特定の条件で雄豚臭のある肉を評価したもので、一般的な豚肉のあらゆる臭みを同じ方法で抑えられることを示すものではありません。[5]ワインやスパイスによる雄豚臭の軽減効果
雄豚臭のある肉を対象とした研究では、白ワインやスパイスなどを含むマリネ液を肉に注入することで、雄豚臭が目立ちにくくなったと報告されています。特に、ナツメグとショウガを含む配合で、雄豚臭を抑える効果が高くなりました。[6] ただし、この研究では、白ワインやスパイスに加えて、塩や食品添加物などを含むマリネ液を肉に注入し、その後に一定の条件で処理しています。家庭で肉を酒やスパイスに漬け込む方法と同じ効果が得られるとは限りません。 また、ニンニクを使った雄豚臭対策の研究でも、結果は一様ではありません。ニンニクとパセリを使った衣揚げで雄豚臭が目立ちにくくなったという報告がある一方、ニンニクを含むマリネ液を注入した研究では、ナツメグとショウガを含む配合の方が高い効果を示しました。[5][6] このように、雄豚臭を抑える効果は、食材の組み合わせや調理・処理方法によって変わります。また、これらの研究は主に雄豚臭を対象としており、脂肪の酸化や保存中の変化によるにおいにも同じ効果があるとは限りません。保存方法を見直す
豚肉の品質を保つには、購入後、適切な温度ですぐに保存し、できるだけ空気に触れないように包むことが大切です。農林水産省は、ドリップを拭き取り、ラップや密閉容器を使って空気に触れにくくすることや、冷蔵庫のチルドルームを活用することを勧めています。[7] すぐに使わない場合は、1回に使う量ごとに小分けして冷凍すると、必要な分だけ取り出せます。小分けにしておけば、使う分だけ解凍でき、解凍した肉を再び凍らせることも避けやすくなります。 冷凍した肉は、冷蔵庫内や電子レンジなどで適切に解凍し、解凍後は速やかに調理してください。室温に長時間放置せず、保存や解凍の方法にも注意しましょう。[3][8]臭い豚肉は食べても大丈夫?
普段とは違う強い異臭や、明らかな品質の変化がある豚肉は、食べずに廃棄してください。臭み取りのために香味食材を使ったり、加熱したりしても、異常のある肉を安全な状態に戻すことはできません。[3] また、食中毒の原因となる微生物が存在していても、肉の見た目やにおいに明らかな変化がない場合があります。安全に食べるためには、購入時の状態だけでなく、保存温度や保存期間、調理時の衛生管理にも注意が必要です。[4] 豚肉は中心部まで十分に加熱して食べましょう。また、生肉を扱った手や調理器具から、加熱後の食品に細菌が移らないようにすることも重要です。[4]まとめ
豚肉のにおいには、肉や脂肪に含まれる成分、雄豚臭、脂肪の酸化、保存中の変化など、複数の原因があります。雄豚臭の原因物質であるアンドロステノンは、においの感じ方に大きな個人差があります。一方、スカトールは、アンドロステノンほど感じ方に大きな個人差がなく、多くの人が高濃度の肉を不快に感じるとされています。 ドリップを拭き取る、香味食材やスパイスを使う、適切な温度で保存するといった工夫は、においを目立ちにくくしたり、品質の変化を抑えたりするのに役立ちます。ただし、臭み取りによって腐敗した肉を安全にすることはできません。 普段とは違う強い異臭や明らかな品質の変化がある豚肉は食べず、保存方法や期限を守り、十分に加熱して食べることが大切です。よくある質問
- 豚肉は冷凍すると臭くなりますか?
- 冷凍しただけですぐに臭くなるわけではありません。ただし、保存期間や包装の状態によっては、脂肪の酸化などでにおいが変化することがあります。空気に触れにくいように包み、適切な温度で保存しましょう。
- 購入したばかりの豚肉が臭うのはなぜですか?
- 肉や脂肪に含まれる成分や、包装内にたまったにおい成分などが関係している場合があります。ただし、強い異臭や普段と違う変化がある場合は食べずに、販売店などに相談してください。
- 消費期限内なら、臭いがあっても食べられますか?
- 消費期限内でも、保存状態によって品質が変化することがあります。普段とは違う強い異臭や明らかな品質の変化がある場合は食べないでください。期限表示だけで安全性を判断しないことが大切です。
- 豚肉の臭みは加熱すればなくなりますか?
- 加熱によってにおいの感じ方が変わることはありますが、臭みの原因物質がすべてなくなるわけではありません。異臭のある肉は、加熱して食べることも避けてください。
参考文献・出典
- Bleicher J, Ebner EE, Bak KH. Formation and Analysis of Volatile and Odor Compounds in Meat—A Review. Molecules. 2022;27(19):6703. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC9572956/
- Bonneau M, Weiler U. Pros and Cons of Alternatives to Piglet Castration: Welfare, Boar Taint, and Other Meat Quality Traits. Animals. 2019;9(11):884. doi:10.3390/ani9110884. https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6912452/
- 農林水産省「安全に食事を楽しむ!肉、魚、野菜の調理法」 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2506/spe1_02.html
- 農林水産省「お肉はしっかり火を通してから食べましょう」 https://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/raw_meat.html
- Borrisser-Pairó F, Panella-Riera N, Gil M, Kallas Z, Linares MB, Egea M, Garrido MD, Oliver MA. Consumers’ sensitivity to androstenone and the evaluation of different cooking methods to mask boar taint. Meat Science. 2017;123:198–204. doi:10.1016/j.meatsci.2016.10.006. https://doi.org/10.1016/j.meatsci.2016.10.006
- Zapata E, Egea M, Peñaranda I, et al. Spiced-marinating injection brine effect on the entire pork quality. European Food Research and Technology. 2024;250:2421–2430. doi:10.1007/s00217-024-04549-1. https://link.springer.com/article/10.1007/s00217-024-04549-1
- 農林水産省「aff」2026年4月号「豚にまつわる基礎知識」内「豚肉の上手な保存方法」 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2604/pdf/aff2604-01.pdf
- 農林水産省「知っておきたい食中毒予防の基本」 https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2506/spe1_01.html
運営・編集:におい展実行委員会
世界一くさい缶詰で全国を騒がせた「におい展」。全国各地を巡回中。累計40万人を動員。