香水が臭いと感じるのはなぜ?人によって香りの好みが違う理由を解説
香水を臭いと感じるのはなぜでしょうか。香りの好みが人によって異なる理由を、嗅覚受容体の遺伝的な違いや感情・記憶との関係、嗅覚の慣れなどから科学的に解説します。
好きな香水を心地よいと感じる人がいる一方で、同じ香水を「きつい」「苦手」「臭い」と感じる人もいます。これは、香水の品質だけで決まるものではありません。人によってにおいの感じ方や好みが異なることに加え、香水の種類や使う量、周囲の環境なども関係しています。
香水の香りは、鼻にある嗅覚受容体がにおいの分子を捉えることで感じられます。ただし、同じにおいでも、すべての人が同じように感じるわけではありません。また、香水をつけた本人と周囲の人とでは、香りの感じ方が異なる可能性もあります。
この記事では、香水を臭いと感じる理由について、嗅覚の仕組みや香りの好みの個人差、香水の使い方などから解説します。
1. 香水を臭いと感じるのはなぜ?
香水を臭いと感じる理由は一つではありません。主に、においの感じ方の個人差や香りの好み、香水の強さ、周囲の環境などが関係しています。
嗅覚の感じ方には個人差がある
人の鼻には、においの分子を捉える「嗅覚受容体」があります。嗅覚受容体にはさまざまな種類があり、どの受容体がどの程度働くかによって、においの感じ方が変わります。
嗅覚受容体に関わる遺伝子には個人差があるため、同じにおいでも、ある人には強く感じられ、別の人には弱く感じられることがあります。心地よいと感じる人がいる一方で、刺激が強い、不快だと感じる人もいます。
Trimmerら(2019)の研究では、嗅覚受容体に関わる遺伝的な違いが、特定のにおいの強さや快・不快の感じ方と関連することが報告されています。ただし、香水の好みは、嗅覚受容体の違いだけで決まるわけではありません。
香りの好みには共通する傾向と個人差がある
香りの好みには人によって異なる部分がある一方、多くの人に共通する傾向もあります。
Arshamianら(2022)は、9つの非西洋文化圏の225人を対象に、単一のにおい物質を快いと感じる順に並べてもらいました。その結果、評価の違いのうち、文化によって説明できる部分は約6%、個人差による部分は約54%、においの分子ごとに共通する傾向は約41%でした。
この研究からは、においの好き嫌いには個人差が大きく関わる一方、多くの人に共通する感じ方もあることが分かります。ただし、調べたのは香水ではなく、単一のにおい物質です。また、個人差が経験や学習、遺伝のどれによって生じるのかまでは明らかになっていません。
つまり、特定の香水を苦手に感じる人がいても、それだけで香水の品質が悪いとはいえません。香りの感じ方や好みそのものが、人によって異なるためです。
2. 香水の香りは気分や状況によっても感じ方が変わることがある
においの感じ方は、嗅覚の特性だけでなく、そのときの気分や周囲の状況にも影響されることがあります。
Kontarisら(2020)のレビューでは、においと気分・感情・行動の関係が整理されています。においが気分や感情に関係するだけでなく、そのときの感情が、においをどう受け止めるかに影響する可能性も示されています。
例えば、以前は心地よいと感じていた香りを、その日の気分によってはあまり好ましく感じないことも考えられます。ただし、気分が変われば必ず香水の評価も変わるというわけではありません。
香水を苦手に感じたときは、香りそのものだけでなく、そのときの気分や周囲の状況も振り返ると、理由を考える手がかりになります。
3. 香水の種類によっても感じ方は変わる
香水にはさまざまな香料が使われています。花のような香り、柑橘系の香り、木を思わせる香り、スパイスのような香りなど、香りの系統によって好みが分かれることがあります。
香水は複数の香料を組み合わせて作られています。そのため、特定の香料だけでなく、香り全体の組み合わせが好みに合わない場合もあります。単体では心地よく感じる香りでも、ほかの香料と組み合わさることで、印象が変わることがあります。
また、香水は時間がたつにつれて、感じられる香りが変化することがあります。つけた直後と、しばらく時間がたった後では印象が異なる場合もあるため、最初の香りだけで判断せず、時間がたってからの香りも確かめるとよいでしょう。
4. 香水が強すぎると臭いと感じられることがある
好みの香水であっても、香りが強すぎると不快に感じられることがあります。自分にとってはちょうどよい強さでも、周囲の人には強すぎる場合があるためです。
特に、換気が十分でない室内や人が密集した場所では、香りが気になりやすくなることがあります。香水を使うときは、香りの種類だけでなく、つける量や場所、周囲の環境にも気を配ることが大切です。
香りに慣れると、自分では弱く感じることがある
同じにおいを繰り返し嗅いでいると、そのにおいに対する反応が弱まることがあります。このような反応の低下は「嗅覚の慣れ」と呼ばれ、その背景にある神経の働きは「順応」と呼ばれます。
Pellegrinoら(2017)は、人の嗅覚における慣れと順応について整理したレビューを発表しています。この仕組みから、香水をつけた本人は香りを弱く感じ、周囲の人との感じ方に差が出たり、つける量が増えたりする可能性も考えられます。
ただし、このレビューは、香水をつけた本人と周囲の人の感じ方の違いや、嗅覚の慣れと香水の使用量との関係を直接調べたものではありません。これらは、一般的な嗅覚の仕組みから考えられる可能性です。
香りに慣れてきたと感じても、すぐに香水をつけ足すのは避け、最初に決めた量を保つことが、香りを強くしすぎないための方法の一つです。
5. 香水は体臭と組み合わさることで印象が変わる可能性がある
香水をつけたときのにおいは、香水そのものだけで決まるとは限りません。体から感じられるにおいと香水が組み合わさることで、香りの印象が変わる可能性があります。ただし、その仕組みがすべて明らかになっているわけではありません。
Lenochováら(2012)の研究では、男性の腋につけた香水と体臭が混ざったサンプルを、女性の評価者が嗅いで評価しました。その結果、香水を使ったサンプルは、使わなかったサンプルよりも、快適さや魅力の評価が高くなる傾向が見られました。ただし、評価の変化には、においを提供した人による違いがありました。
さらに、参加者が普段から自分で選んで使っている香水は、研究者が指定した共通の香水よりも、体臭と組み合わさったときに快適さや魅力の評価が高くなる傾向が示されました。一方、香水単独の心地よさの評価には、有意な差が認められませんでした。
この研究は、香水と個人のにおいの組み合わせが、香りの印象に関係する可能性を示しています。ただし、においを提供した人は少人数の男性で、実験ごとに7〜12名でした。評価者も女性のみで、調べたのは腋のにおいです。そのため、結果をすべての性別や体の部位、香水に当てはめることはできません。
6. 香水のにおいで頭痛や吐き気を感じる人もいる
香水などの香り付き製品をきっかけに、頭痛や吐き気などの不調を訴える人もいます。
消費者庁は「みんなの消費安全ナビ」で、PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された相談事例として、香り付き製品による頭痛や吐き気の訴えを紹介し、周囲への配慮を呼びかけています。
ただし、こうした相談事例があるからといって、香り付き製品がすべての人に同じ影響を与えるわけではありません。また、特定の症状の原因が必ず香水であるとも限りません。症状の現れ方や原因には個人差があります。
香水のにおいで不調を感じた場合は、まず香りの強い場所から離れ、換気された場所などで様子を見ましょう。症状が強い場合や、繰り返し起こる場合、長引く場合は、医療機関に相談することも検討してください。
香水を使う側も、周囲の人が香りを快適に感じるとは限らないことを意識し、使う量や場所に配慮することが大切です。
7. 香水を臭いと感じるときはどうすればよい?
香水を臭いと感じたときは、無理に好きになろうとする必要はありません。苦手に感じる理由を整理すると、自分に合う香りを探したり、周囲との摩擦を避けたりする手がかりになります。
- 苦手な香りの傾向を整理する:花の香り、甘い香り、スパイス系の香りなど、どのような系統が苦手なのかを確認します。
- 香りの強さを変えて試す:香りの種類だけでなく、使う量によっても印象が変わることがあります。
- 時間がたってからの香りも確認する:つけた直後だけでなく、少し時間をおいてからの印象も確かめます。
- 体調や場所との関係を振り返る:特定の場所や体調のときに限って苦手に感じるかどうかを確認します。
- 周囲への配慮を忘れない:香りが強くなりやすい場所や人が密集する場所では、使用量を控えることも選択肢です。
香水の好みは人それぞれです。自分が心地よいと感じる香りを楽しみながら、ほかの人には強く感じられる可能性も考えて使うことが大切です。
まとめ
香水を臭いと感じる理由には、嗅覚受容体などに関わる個人差、香りの好み、気分や環境、香水の種類や強さ、体のにおいとの組み合わせなど、さまざまな要因が関係しています。
においの快・不快には、多くの人に共通する傾向がある一方、個人差も大きく関わります。また、香水をつけた本人は香りに慣れて、周囲の人よりも弱く感じる可能性があります。ただし、本人と周囲の人の感じ方の違いが、嗅覚の慣れによってどの程度生じるかは、ここで紹介したレビューからは分かりません。
香水を臭いと感じることは、必ずしも香水の品質が悪いことを意味しません。香りの感じ方や好みには個人差があることを理解し、自分に合う香りを選ぶとともに、使う量や場所にも配慮しましょう。
よくある質問
- 香水の好みは生まれつき決まっているのですか?
- 生まれつきの嗅覚の個人差は、香りの感じ方に関係します。ただし、香水の好みがそれだけで決まるわけではありません。においの好みには、多くの人に共通する傾向と個人差の両方があり、個人差がどのような要因によって生じるのかは、十分に分かっていない部分もあります。
- 今まで好きだった香水を急に苦手に感じるのはなぜですか?
- 香りの感じ方は、そのときの気分や周囲の状況などによって変わる可能性があります。ただし、好みが変わる理由は一つではなく、特定の原因を断定することはできません。
- 同じ香水でも、つける人によって香りが違って感じられるのはなぜですか?
- 体から感じられるにおいと香水の組み合わせによって、香りの印象が変わる可能性があります。研究でも、香水を使ったときの評価の変化には、においを提供した人による違いが見られています。ただし、研究で調べられたのは男性の腋のにおいを使ったサンプルであり、あらゆる部位や人に当てはまるとは限りません。
- 香水のにおいが時間とともに変わることはありますか?
- あります。香水は時間の経過とともに感じられる香りが変化することがあり、つけた直後としばらくたった後では印象が異なる場合があります。
- 香水を苦手に感じる人がいるなら、使わないほうがよいのでしょうか?
- 必ずしも使わないほうがよいわけではありません。ただし、香りの感じ方には個人差があるため、使う量や場所に配慮することが大切です。香りで体調不良を感じる人がいることも意識しましょう。
参考文献・出典
- Trimmer C, Keller A, Murphy NR, et al. Genetic variation across the human olfactory receptor repertoire alters odor perception. Proceedings of the National Academy of Sciences. 2019;116(19):9475-9480. https://doi.org/10.1073/pnas.1804106115
- Arshamian A, Gerkin RC, Kruspe N, et al. The perception of odor pleasantness is shared across cultures. Current Biology. 2022;32(9):2061-2066.e3. https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.02.062
- Kontaris I, East BS, Wilson DA. Behavioral and Neurobiological Convergence of Odor, Mood and Emotion: A Review. Frontiers in Behavioral Neuroscience. 2020;14:35. https://doi.org/10.3389/fnbeh.2020.00035
- Pellegrino R, Sinding C, de Wijk RA, Hummel T. Habituation and adaptation to odors in humans. Physiology & Behavior. 2017;177:13-19. https://doi.org/10.1016/j.physbeh.2017.04.006
- Lenochová P, Vohnoutová P, Roberts SC, Oberzaucher E, Grammer K, Havlíček J. Psychology of Fragrance Use: Perception of Individual Odor and Perfume Blends Reveals a Mechanism for Idiosyncratic Effects on Fragrance Choice. PLOS ONE. 2012;7(3):e33810. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0033810
- 消費者庁「Vol.679 知ってください!その香り困っている人もいます」 https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20260216/ (2026年10月12日閲覧)
運営・編集:におい展実行委員会
世界一くさい缶詰で全国を騒がせた「におい展」。全国各地を巡回中。累計35万人を動員。