部屋の「こもった臭い」はなぜ起こる?生活臭が室内に残る理由を科学的に解説
部屋の「こもった臭い」はなぜ起こるのでしょうか。料理や汗、衣類、ペットなどの生活臭が室内に残る仕組みをはじめ、換気や湿気、カビ、室内に付着したにおいの関係を科学的に解説。こもったにおいを減らすために確認したいポイントも紹介します。
窓を閉めたまま過ごしていると、部屋に入ったときに「なんとなくこもった臭いがする」と感じることがあります。料理や汗、衣類、ペットなど、室内にはさまざまなにおいの発生源があります。換気が少ないと、こうしたにおいが室内に残りやすくなります。
部屋の「こもった臭い」は、一つの物質だけが原因とは限りません。室内で発生したさまざまなにおいが十分に外へ出ていかず、空気中や室内の表面に残ることで、複数のにおいが混ざって感じられるのが基本的な仕組みです。さらに、湿気によるカビの増殖や、同じにおいを嗅ぎ続けることで嗅覚が慣れることも関係します。
部屋の「こもった臭い」はなぜ起こる?
部屋のにおいがこもる主な理由は、においの発生量に対して、換気による排出が十分ではないためです。
室内では、調理、汗や体臭、衣類、寝具、ペットなどから、さまざまな揮発性物質が放出されています。室内の換気が十分なら、こうした物質の一部は屋外へ排出されます。一方、換気が少ないと、室内に残りやすくなります。
室内の空気の状態には、建物の構造や換気、仕上げ材、住んでいる人の活動など、さまざまな要因が関係しています。換気も、その重要な要素の一つです。
そのため「こもったにおい」は、特定の一つの物質によって生じるというより、複数の発生源から出た物質が室内にたまった結果として感じられることがあります。
「生活臭」とは何?
生活臭とは、料理、汗、衣類、寝具、ペット、たばこなど、日常生活の中で発生するさまざまなにおいをまとめて表す言葉です。
「生活臭」という名前の特定の化学物質があるわけではありません。発生源によって含まれる物質は異なり、複数のにおいが混ざることで、その部屋特有のにおいとして感じられることがあります。
1993年の住環境の臭気に関するレビューでも、換気、体臭、調理臭、建材からのにおいなど、住宅内にはさまざまな臭気源があることが整理されています。
生活臭はどこから発生する?
室内の生活臭には、さまざまな発生源があります。代表的なものを見ていきましょう。
料理や調理から出るにおい
調理中には、食品そのものの香りだけでなく、加熱によって生じる揮発性物質なども室内に広がります。
特に焼く、炒める、揚げるといった調理では、においに関係する物質が多く発生することがあります。換気が少ないと、それらが室内に残りやすくなります。
汗や体から出るにおい
人の体からは、汗や皮脂などに由来するさまざまな揮発性物質が放出されます。人が長時間過ごす部屋では、こうしたにおいが室内にたまることがあります。
特に寝室やリビングなど、長時間人が過ごす場所では、体から出るにおいが生活臭の一部になることがあります。
衣類や寝具から出るにおい
衣類や寝具には、汗や皮脂など、使用中に体から移った成分が付着します。これらがにおいの発生源となり、室内の空気に影響することがあります。
衣類や寝具に付着した成分も、室内のにおいに影響する発生源の一つです。
ペットから出るにおい
ペットを飼っている場合は、動物の体、排泄物、餌などが室内のにおいの発生源になります。
こうしたにおいも換気が少ないと室内に残りやすく、ほかの生活臭と混ざることで、その部屋特有の「こもったにおい」として感じられることがあります。
たばこによるにおい
たばこの煙に含まれる物質は、空気中に漂うだけではありません。一部はカーペット、壁、家具、衣類などの表面に付着して残ります。
こうした残留物は「三次喫煙(thirdhand smoke)」と呼ばれ、室内の表面に残ったたばこ由来の物質が長期間存在することが知られています。
そのため、喫煙後に換気するだけでは、室内に残ったにおいを完全に取り除けない場合があります。
家具や建材などから出るにおい
家具や建材などから揮発性の物質が放出され、室内のにおいに影響することもあります。
室内の揮発性有機化合物(VOC)は、建材や家具だけでなく、清掃用品、調理、住んでいる人の活動など、さまざまな発生源から放出されます。室内の濃度には、換気量や温度、湿度なども関係します。
湿気やカビも「こもったような臭い」に関係する
部屋の「こもったにおい」を考えるときは、湿気やカビも確認する必要があります。
湿気の多い環境では、カビが増えやすくなります。世界保健機関(WHO)も、室内でカビなどの微生物が増殖するには十分な水分が必要であり、持続的な湿気や微生物の増殖を防ぐことが重要だとしています。
カビの一部は、微生物由来揮発性有機化合物(mVOC)と呼ばれる揮発性物質をつくります。EPA(米国環境保護庁)は、これらのmVOCがカビ臭やかび臭いにおいの原因になることがあると説明しています。
そのため、部屋のにおいが「湿ったような」「かび臭い」と感じられる場合は、単に空気がこもっているだけでなく、結露や水漏れ、湿った場所などがないか確認することも大切です。
米国EPAの資料では、室内の相対湿度を60%未満、できれば30~50%に保つことが推奨されています。ただし、住宅の条件や季節によって適切な湿度管理は異なります。
換気すると、なぜこもった臭いが減るの?
換気によってこもったにおいが減るのは、室内にたまった空気を外へ出し、新しい空気を取り入れることで、においに関係する物質の室内濃度を下げられるためです。
室内の揮発性有機化合物(VOC)の濃度には、発生源だけでなく空気交換率も関係します。室内の空気中にある物質は、換気によって屋外へ排出される一方、室内の表面などに取り込まれることもあります。
換気によって室内の空気中にある物質の濃度が下がれば、においの感じ方にも影響すると考えられます。
また、国土交通省の資料では、改正建築基準法が平成15年7月1日に施行され、シックハウスの原因となる化学物質の室内濃度を下げるため、建材や換気設備を規制することが説明されています。これは、におい対策そのものを目的とした規制ではありません。住宅の場合、換気回数0.5回/h以上の機械換気設備、いわゆる24時間換気システムなどの設置が必要とされています。
24時間換気設備が設置されている住宅では、基本的には設備を適切に使用し、給気口や排気口をふさがないことが重要です。
部屋に臭いが残るのは、空気中だけが原因ではない
換気してもすぐににおいが戻ってくる場合は、空気中に漂っている物質だけでなく、室内の表面や布製品などに、においに関係する物質が残っている可能性があります。
たとえば、たばこ由来の物質はカーペットや壁、家具などの表面に残ることが知られています。
また、衣類や寝具などにも、汗や皮脂などに由来する成分が付着します。
このため、換気だけでなく、においの発生源を取り除くことや、においに関係する物質が残っているものを洗濯・清掃することも重要になります。
こもった臭いを減らすには、発生源と空気の流れを確認する
部屋のこもったにおいを減らすには、単に香りを足すのではなく、まず「どこからにおいが出ているのか」を確認することが基本です。
1. においの発生源を確認する
料理の後なら調理器具やキッチン周辺、寝室なら寝具、衣類からにおう場合は洗濯物や衣類そのものなど、場所ごとに発生源を確認します。
ペットを飼っている場合は、体や排泄物、餌の周辺なども確認します。
2. 換気を行う
室内の空気を入れ替え、においに関係する物質を屋外へ排出します。
24時間換気設備がある場合は、適切に作動させることも重要です。
3. 湿度を確認する
湿気が多い場合は、換気や除湿などによって湿度を下げます。特に、かび臭さを感じる場合は、湿気がたまりやすい場所や結露、水漏れなどがないか確認します。
4. においが付着しやすいものを清掃する
衣類、寝具、カーテン、カーペットなど、においに関係する物質が付着している可能性のあるものは、洗濯や清掃を行います。
発生源を取り除かずに芳香剤などで別の香りを加えるだけでは、原因となる物質そのものがなくなるわけではありません。
同じ部屋にいると臭いに気づきにくくなることもある
こもったにおいに気づきにくくなる理由は、部屋の空気が変化しているからだけではありません。同じにおいを嗅ぎ続けることで、嗅覚そのものが慣れることもあります。
これは「嗅覚順応」と呼ばれる現象です。2000年のレビューでは、においへの反復・長時間の曝露によって嗅覚感度が低下し、曝露がなくなると感度が回復することが整理されています。
そのため、長時間その部屋にいる本人はにおいをあまり感じなくても、外から帰ってきた人には強く感じられることがあります。
「こもった臭い」を減らすときに確認したいこと
部屋のにおいが気になる場合は、次の点を順番に確認すると原因を見つけやすくなります。
- 料理、汗、衣類、寝具、ペット、たばこなどの発生源がないか
- 換気設備が適切に作動しているか
- 給気口や排気口がふさがれていないか
- 室内の湿度が高くなっていないか
- 結露、水漏れ、カビが発生している場所がないか
- カーテン、カーペット、寝具、衣類などににおいが付着していないか
特に「換気すると一時的ににおいが弱くなるものの、すぐに戻る」という場合は、室内に継続的な発生源がある可能性があります。
まとめ
部屋の「こもったにおい」は、室内で発生したさまざまなにおいが十分に排出されず、空気中や室内の表面などに残ることで感じられるものです。
料理、汗、衣類、寝具、ペット、たばこ、家具や建材など、発生源は一つとは限りません。また、湿気によってカビが増殖すると、カビ由来の揮発性物質がにおいに関係することもあります。
こもったにおいを減らすには、芳香剤などで別の香りを加えるだけでなく、発生源を確認して取り除き、適切に換気し、湿度やカビ、においが付着した布製品なども確認することが大切です。
- 部屋のこもったにおいは、カビが原因ですか?
- 必ずしもカビが原因とは限りません。料理、汗、衣類、寝具、ペット、たばこなど、さまざまな生活臭が換気不足によって室内に残ることがあります。ただし、湿ったような、かび臭いにおいが続く場合は、結露や水漏れなどによってカビが増殖していないか確認することが大切です。
- 24時間換気は、部屋のにおい対策にもなりますか?
- 24時間換気は、室内の空気を継続的に入れ替えることで、室内にたまった物質を排出するのに役立ちます。ただし、現在の24時間換気設備はシックハウス対策を目的としたもので、におい専用の設備ではありません。においの発生源そのものを取り除くことも重要です。
- 換気しても、こもったにおいがすぐに戻るのはなぜですか?
- 室内に継続的な発生源が残っている可能性があります。また、衣類や寝具、カーペット、家具などににおいに関係する物質が残っている場合、換気だけでは十分に取り除けないことがあります。
- 芳香剤を使えば、こもったにおいはなくなりますか?
- 芳香剤は別の香りを加えることで、においを感じにくくすることはできますが、原因となる物質そのものを取り除くものではありません。まず発生源を確認し、換気や清掃などによって原因を減らすことが基本です。
- 自分では部屋のにおいに気づきにくいのはなぜですか?
- 同じにおいを長時間嗅ぎ続けると、嗅覚がその刺激に慣れて感度が低下する「嗅覚順応」が起こることが一因です。ただし、外から帰ってきたときににおいを強く感じる現象には、室内のにおいの濃度や発生源など、ほかの要因も関係します。
参考文献・出典
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