生ごみが臭うのはなぜ?嫌なにおいがする仕組みを科学的に解説
生ごみが臭うのはなぜ?微生物による分解でにおいが発生する仕組みや、硫黄化合物などのにおい成分、温度・水分によって臭いやすくなる理由、家庭でできる対策まで科学的に解説します。
キッチンのごみ箱に入れていた生ごみから、酸っぱいにおいや腐ったようなにおいがしてくることがあります。特に、気温が高い時期や、生ごみを数日置いていたときは、においが気になりやすくなります。
生ごみが臭う主な理由は、食べ物に含まれる成分を微生物が分解し、その過程でにおいのもとになるさまざまな化合物が空気中へ出てくるためです。
生ごみのにおいは、一つの物質だけでできているわけではありません。野菜や果物、肉、魚など、生ごみの種類によって関係する物質が異なります。また、温度や水分などの条件によっても、においの出方は変わります。
生ごみのにおいの正体は何?
生ごみのにおいには、微生物による分解などでできる、さまざまな揮発性化合物(きはつせいかごうぶつ)が関係しています。
揮発性化合物とは、空気中へ移動しやすい性質を持つ化合物のことです。生ごみの中でこうした物質ができると、空気中へ広がって鼻に届き、私たちはそれを「生ごみのにおい」として感じます。
食品廃棄物の分解を調べた研究では、アルコール、エステル、アルデヒド、ケトン、硫黄を含む化合物など、さまざまな揮発性有機化合物(きはつせいゆうきかごうぶつ)が確認されています。どの物質がどれくらい増えるかは、生ごみの種類や分解が進む条件によって変わります。
なぜ生ごみから嫌なにおいがするの?
生ごみのにおいは、分解の過程でできたさまざまな揮発性化合物が空気中へ出て、鼻に届くことで感じられます。
こうした物質の中には、強いにおいを持つものもあれば、それほど強いにおいを持たないものもあります。私たちが感じる生ごみ特有のにおいは、いくつもの物質が重なってできています。
また、どんな物質ができるかは、生ごみに含まれる成分によって変わります。たとえば、野菜や果物と肉や魚では含まれる成分が違うため、分解の過程で関係する揮発性化合物にも違いが出ます。
微生物が生ごみを分解する
微生物は、生ごみに含まれる糖質やたんぱく質、脂質などを栄養源として利用します。その過程で、さまざまな揮発性化合物がつくられます。
微生物が食品の成分を利用すると、微生物の体内でさまざまな化学反応が起こります。その結果、二酸化炭素や水などのほか、いろいろな物質ができます。
その中には、空気中へ移動しやすいものもあります。こうした物質が生ごみから外へ出て鼻に届くことで、私たちは生ごみのにおいを感じます。
食品廃棄物の分解を調べた研究では、どんな揮発性化合物がどれくらい出るかと、そこにいる微生物の構成との間に関連がみられています。
硫黄を含む化合物が強いにおいに関係する
肉や魚などの分解では、硫黄を含む揮発性化合物ができ、腐ったようなにおいに関係することがあります。
食品廃棄物の分解では、ジメチルスルフィドやジメチルジスルフィドなどの硫黄を含む揮発性化合物が確認されています。これらは、生ごみのにおいに関係する物質の一つです。PubMed
また、食品廃棄物の発酵を調べた研究でも、硫黄を含む化合物が不快なにおいに大きく関係していたことが報告されています。
生ごみの種類によってにおいが違う
生ごみの種類によって含まれる成分が違うため、分解の過程で関係する揮発性化合物や、感じられるにおいも変わります。
果物、野菜、肉、魚などでは含まれている成分が異なります。そのため、微生物が分解するときにできる揮発性化合物の種類や割合にも違いが出ます。
ある研究では、果物の廃棄物では2-ブタノンや酢酸エチル、野菜や肉の廃棄物ではジメチルスルフィドやジメチルジスルフィドなどの揮発性化合物が多く確認されました。PubMed
そのため、果物の生ごみと魚や肉の生ごみでは、関係する化学物質の組み合わせが異なり、感じられるにおいにも違いが出ることがあります。
生ごみはなぜ時間が経つと臭くなる?
時間が経つと微生物による分解が進み、その過程でにおいに関係する揮発性化合物が出てくるためです。
ただし、においの強さは時間だけで決まるわけではありません。生ごみの種類、温度、水分、分解が進む環境など、いくつもの条件が関係しています。
温度が高いと臭いやすくなる
温度が高くなると微生物の活動が活発になりやすく、生ごみの分解や、においに関係する揮発性化合物の発生が進みやすくなります。
食品廃棄物の初期分解を調べた研究では、35℃で出てきた揮発性有機化合物の量が、10℃の場合の約28倍になりました。
これは、生ごみのにおいそのものが28倍になったという意味ではありません。比較されたのは、発生した揮発性有機化合物の量です。
このため、夏場など気温が高い環境では、生ごみから出る揮発性化合物が増え、においが強くなる可能性があります。
水分はにおいの発生にも関係する
生ごみの水分量は、微生物による分解や、においの発生に影響する条件の一つです。
生ごみはもともと水分を多く含んでいます。水分の状態は、微生物の活動や生ごみの分解の進み方に影響します。
また、生ごみから出た液体が袋やごみ箱の底にたまると、においの原因となる物質が液体に含まれた状態になります。そのため、液体がたまった生ごみでは、においを強く感じる場合があります。
食品廃棄物の分解を調べた研究でも、液体部分から出るにおいに、硫黄を含む揮発性化合物が関係していることが報告されています。
分解する環境によってにおいも変わる
生ごみの分解では、pHや微生物の種類などの環境条件によって、出てくるにおいの成分や強さが変わります。
生ごみの中では、微生物による分解が進むにつれて環境も変化します。それに伴って、活動する微生物の種類や、微生物がつくる物質も変わる場合があります。
食品廃棄物の堆肥化(たいひか)を調べた研究では、強いにおいと低pH(pH6未満)が関連しており、同時に嫌気性(けんきせい)または通性嫌気性の微生物に近い菌群が確認されたことが報告されています。
ただし、この研究は酸素量そのものを変えて、酸素の少なさがにおいの原因になることを直接調べたものではありません。そのため、酸素の少ない状態とにおいの関係は、微生物の種類やpHなどの条件とあわせて考える必要があります。
生ごみのにおいにはどんな成分が関係する?
生ごみのにおいには、硫黄化合物やアルデヒド、ケトン、エステル、アルコール、有機酸など、さまざまな化合物が関係しています。
代表的なものを大きく分けると、次のような化合物があります。
- 硫黄を含む化合物:硫黄を含む食品成分の分解などによってでき、腐ったようなにおいに関係する場合があります。
- アルデヒド・ケトン類:食品の分解過程などでできる揮発性化合物で、生ごみのにおいに関係します。
- エステル類:果物などの分解で確認されることがあり、種類によっては甘いようなにおいとして感じられます。
- アルコール類:生ごみの分解などでできることがあります。
- 有機酸:微生物による発酵などででき、酸っぱいようなにおいに関係する場合があります。
実際の生ごみでは、これらが単独で存在するのではなく、多数の化合物が混ざっています。その組み合わせによって、私たちが感じる「生ごみらしいにおい」が形づくられます。
生ごみのにおいが強くなりやすい条件
生ごみのにおいは、温度や水分、放置時間、生ごみの種類など、いくつもの条件が重なることで強くなりやすくなります。
- 気温が高い
- 生ごみに水分が多く含まれている
- 肉や魚など、たんぱく質を多く含む食品が入っている
- 生ごみを長時間放置している
- ごみ袋や容器の中に液体がたまっている
これらはそれぞれ独立した条件ではありません。たとえば、夏場に水分の多い生ごみを袋に入れて長時間放置すると、温度や水分など、分解が進みやすい条件が重なります。
生ごみのにおいを減らすには?
生ごみのにおいを抑えるには、微生物による分解が進む時間を短くし、水分や高温など、においが発生しやすい条件をできるだけ減らすことが基本です。
家庭でできる対策としては、次のような方法があります。
- 生ごみを長期間ため込まず、できるだけ早く処分する
- 水分をできるだけ減らしてからごみ袋に入れる
- 気温が高い時期は特に長時間放置しない
- ごみ袋の中に液体をためない
- ごみ箱に付着した生ごみや液体をこまめに取り除く
特に重要なのは、単に「においを消す」ことではなく、においの原因となる物質が増えたり、たまったりする時間を短くすることです。
生ごみのにおいについてよくある質問
- 生ごみはなぜ夏になるとにおいが強くなりやすいのですか?
- 気温が高くなると微生物の活動が活発になりやすく、生ごみに含まれる成分の分解が進みやすくなるためです。研究でも、食品廃棄物から出る揮発性化合物の量は温度によって変化することが確認されています。
- 生ごみのにおいは腐敗した食品そのもののにおいですか?
- 生ごみのにおいは、食品そのものから出る成分だけでなく、微生物が食品に含まれる成分を分解することでできる、さまざまな揮発性化合物が関係しています。そのため、時間の経過とともににおいが変化する場合があります。
- 生ごみはすべて同じようなにおいがしますか?
- いいえ。果物、野菜、肉、魚などでは含まれる成分が異なるため、分解によって出てくる揮発性化合物の種類や割合も異なります。そのため、甘酸っぱいようなにおい、酸っぱいにおい、腐ったようなにおいなど、感じ方にも違いが生じます。
- 生ごみを密閉するとにおいはなくなりますか?
- 密閉すると、においの成分が周囲の空気へ広がるのを一時的に抑えられますが、生ごみの分解そのものが止まるわけではありません。袋や容器の中でにおいの原因となる物質がたまることもあるため、密閉だけでにおいの発生を防げるとは限りません。
- 生ごみのにおいを防ぐには何が重要ですか?
- 生ごみを長時間放置しないことに加え、水分を減らすことや、高温になる環境を避けることが基本です。生ごみの種類や状態によってにおいの出方は異なるため、一つの方法だけではなく、分解が進みやすい条件をできるだけ減らすことが重要です。
まとめ
生ごみが臭う主な理由は、食品に含まれる成分を微生物が分解し、その過程でさまざまな揮発性化合物ができるためです。
生ごみのにおいには、硫黄を含む化合物、アルデヒドやケトン、エステル、アルコール、有機酸など、複数の化合物が関係しています。どの成分がどれくらい関係するかは、生ごみの種類や微生物の活動、温度、水分、分解環境などによって変わります。
そのため、生ごみのにおいを抑えるには、においを単純に「消す」のではなく、微生物による分解が進みやすい状態で長時間放置しないことが基本になります。特に気温が高い時期は、生ごみをため込まず、水分を減らして早めに処分することが、においを抑えるうえで重要です。
参考文献・出典
- Malodorous gases production from food wastes decomposition by indigenous microorganisms https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32062272/
- The emission of volatile organic compounds during the initial decomposition stage of food waste and its relationship with the bacterial community https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2352186422000876
- Odorous VOCs released from bio-decomposition and its interaction mechanism with bacteria: Compared inter-type with intra-type household garbage https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0959652624009715
- Effects of pH and microbial composition on odour in food waste composting https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/23122203/
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